No.19: LUNA MONTI Y JUAN QUINTERO / El Matecito De Las Siete

selected by 小倉


日本のブラジル音楽ファンにおなじみ、アルゼンチンのギタリスト、Agustin Pereyra Lucenaが、現在のアルゼンチンフォルクローレ界最高のギタリストと絶賛するJuan Quintero。彼が私生活でもパートナーというLuna Montiと自主制作したこのアルバムを、数年前都内CDショップで無印良品の企画盤?と一瞬見まがうジャケットが目に止まり何気に試聴したところ息がとまってしまった。憂いがありそれでいて凛とした女性ボーカルと控えめながらも最高に美しいメロディを奏でる男性ギタリストのデュオが織り成す曲は全て包み込むような優しさに満ちていて、聞いたことがないはずなのにどこか懐かしさを感じるものばかり。文化は違っても人間の根源に訴える美しさは普遍的なものと改めて認識させられ ます。手拍子や床を踏んでリズムをとる音、かすかな笑い声がときおり混じり、ふたりの息遣いまでが伝わってきそうな究極アコースティックな世界は一貫して透徹な空気が流れ、人に聞かれることすら全く意識していないのではと思えてしまうほど。その自然さは、最近すっかりジャンルのひとつとして定着した感のある自然体 を売り物にした音楽のあざとい自然さとは次元が違うのは言うまでもありません。Juan Quinteroがリーダーを務めるバンド、Aca Seca Trioはアルバムの日本盤がリリースされ、アルゼンチン本国でもAca Seca Trioとしてのほうが、人気も評価も高いそう。けれど個人的には同アルバムのようなミニマムな編成でこそ、奏者としても作曲家/アレンジャーとしてもその卓越した才能が際立つように思います。一方Luna Montiにはヨガとピラテスのインストラクターとしての横顔も。アコースティックは貧乏くさいとかださいといったイメージも完全に払拭してしまうこの作品、ジャンルを問わず音楽が好きな全ての人達にぜひ聞いてほしいです。