No.10: ANTONIO CALROS JOBIM / Terra Brasilis

selected by 原信一郎 (会員番号151)


1980 年の発売時に LP の 2 枚組で買った。アルバムの内容はてんこ盛り。溢れんばかりに具が乗った海鮮どんぶり。鉢一面(二層)チャーシューメン状態である。しかしアルバム全体に統一感があり、ビートルズで言えば「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」、、、かな。

1. Dreamer (Vivo Sonhando)
2. Canta Mais (Sing Once More)
3. Olha Maria (Amparo)
4. One Note Samba
5. Dindi
6. Quiet Nights of Quiet Stars (Corcovado)
7. Marina
8. Off-Key (Desafinado)
9. Voce Vai Ver (You'll See)
10. Estrada Do Sol (Road to the Sun)
11. Girl from Ipanema
12. Double Rainbow
13. Triste
14. Wave
15. Someone to Light Up My Life (Se Todos Fossem Iguais a Voce)
16. Falando de Amor (Speaking of Love)
17. Two Kites
18. Modinha (Serenade)
19. Song of the Sabia (Sabia)
20. This Happy Madness (Estrada Branca)

幾つか曲について:

3. Olha Maria
ああそうだ、思い出した。あれ、うーんと何を思い出したんだっけ。確かに思い出したんだけどなあ。思い出しはしたけど何を思い出したかを忘れたら、それは思い出したことになるのか。まあいいか確かに思い出したんだから、、、そういう感じの曲。

5. Dindi
小学生の頃、年の近い叔母が初任給でソニーのステレオを買って、製品におまけでついていた EP に入っていた。女性の多分日本人のボーカルだったと思う。間延びしたような不思議なメロディーを好きになった。一方、中学生の頃、偶然ラジオを録音したエレキギターの曲を気に入って繰り返し聴いていた。深海を遊泳するような雰囲気で最後にちょっとだけ盛り上がる。何年もしてから実はそのギターの曲も Dindi であることに突然気付いた。そして、それまで分からなかったことにも驚いた。演奏は Elic Gale だった。

8. Off-Key
ポルトガル語が分からないので「デサフィナード」が音痴という意味だとこのアルバムで初めて知った。導入でジョビンがもともと外した感じのメロディーをさらに外して歌い出すのがしゃれている。ボサノバについて歌ったとも言えるボサノバ。チューニングの合わない拾いもののギターで練習した。

9. Voce Vai Ver
歌詞がわからないのをいいことに、曲調から歌詞の内容を勝手に想像して楽しんでしまうことがある。この曲は淡々としていて、男性パート(ジョビン)と女性パートが、同じメロディーを最初から最後まで重ねて歌うので、男女の関係の対称性について歌っている男女同権思想の歌だと決めつけていた。後でタイトルは「思い知るがいいさ」という怖い意味だと知る。うーん、ジョビンはもてたろうなあ。そいえば、「Por Causa De Voce」も全然間違った想像をしていたのだが、「あなたのせいよ」とか訳されるらしい。

17. Two Kites
去年の 5 月に息子が生まれた。名前がなかなか決まらず、苦し紛れにこの軽やかな曲を彼のテーマ曲と決めて、その曲想から名前を降ろしてこようということになった。まず、「カイト」みたいな名前が候補になったが、元気いっぱいで火を噴きそうな勢いの本人の顔を見てると洋風の軽い感じが似合わない。いいかげんめんどくさくなって、やっぱりお餅を食べるでしょう。コマを回すでしょう。凧上げは龍でしょう。ということで「龍」に決まったのは命名期限の日の朝である。